思い邪なし -下村治と激動の昭和経済
水木楊(みずきよう)
主に戦後経済。オイルショックまでのあたりの経済を。というか、その頃のエコノミストを主人公にしたエコノミスト史みたいな感じ。時間軸がちょいちょいあっちこっちするんだけれども、そっちでこの人のエピソード。あっちであの人のエピソード。のようにエコノミスト達の経緯を入れつつ、当時のエコノミストがどういうことを言っていたのか、どう経済を見ていたのかがつづられている。エッセイや物語、ドキュメンタリーといった類というよりかは、軍記物といった趣。基本的には下村治を主軸にした流れ。
不勉強だから当時の経済については、多少は学んだはずだがさっぱり覚えていないしわからない。が、経済における考え方や見方がもろに政治にも直結していたしていたことを感じさせるし、戦後経済からの流れが結構よくわかる。政治におけるカオスっぷりが現代と比べるとかなり半端ない。首相がよく死ぬ。
現代の経済はもうカオスすぎる感じを受けるけれど、そういう意味で戦後のエコノミストが現実をどう見てどう分析していたかを知ることは、経済を学ぶ上では非常に有益だと感じた。大学の頃は学問としてしか経済を見てこなかったし、ケインズとかの考え方を部分部分で学ぶところだったが、経済人史的なものもあれば、幅が広がり理解も深まっただろうとも思う。経済学史だけだとちょっとな。
著作自体はおよそ30年前のバブル崩壊後なので、バブル後の経済を彼らがどう断じるかは非常に興味をそそられる。個人としては現実を肯定するところから入るので、どちらかというと楽観派なのかもしれない。
参考文献とかを見ると恐ろしい量があるので、作家というのは大変だと感じたりもした。長年の職務の中で読んできたというのもあるのだろうが、一から考え方やエピソードを抜いていくとなるととてつもない作業量に感じる。
新聞記事きっかけで図書館で借りてきた割りに面白く読めた。
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